時評 (平成17年6月27日−7月13日) |
6月27日(月)、経済評論家の長谷川慶太郎氏は、今月末の米連銀理事会定例のFOMC(公開市場委員会)で連続9回目の短期金利引上げが決定されると予測し、これで米国の短期金利は3.25%になる、現在までのこの金融引締め政策は景気を後退させる通説とは反対にアメリカ全体を好景気にさせた前例の無い成功だった、と賞賛しております。
世界的デフレへの対策として、デフレで生じた「余裕資金」をいかに自国の債券や商品市場に導き入れるかが「生産過剰」情勢下の経済では重要なポイントですが、アメリカは金融市場の正常化によってそれを達成した形になり、それはアメリカの政治が極めて強力だから可能なので、大統領が財政赤字削減を決めれば双子の赤字など直ちに解決すると手放しの褒め称え様になっております。
EUの欧州中央銀行や日銀がインフレ時代の硬直した景気観で金融政策を構想している、つまり金融政策如何で経済全体が一方的影響を受けていた時代の先入観が未だに頭から離れないのだ、従って短期資金の供給引締めで個人も企業も資金不足に陥って経済が停滞する(或いは金利を下げれば自然に景気刺激に繋がる)という固定観念ーーー金融市場に誰もが資金を依存しているかの如き金融機関自身の過大評価・錯覚から抜け出せないでいる、それが同時に指摘された訳です。
この指摘には確かにデフレによって資金的余裕の有り余った時代ーー金利政策の影響力が大きく低下した時代ーーに適応出来ないでいる日欧中央銀行の(根回しや利権絡みの多い)遅鈍な動きを正しく言い当ててた一面があるでしょう。
ただ、ドル債権市場や商品市場に世界各国から流入した資金は本当にフェアーな資金であるのか、アメリカの住宅建設景気が消長する可能性は本当に無いのか、今後FRBの金利引上げが続行される中で次に接収するターゲットとなる預貯金は誰の銀行口座なのか、引き続き考えて行きたいと思います。
6月28日(火)、「デフレによって生まれた資金的余裕」この言い方に頷ける日本人の数は多くないだろうと思われます。 それはTOYOTA限定の話ではないのか、銀行業を自前で開設出来るのは愛知県のあの企業を置いて他には無い事実を含め、そう返答したくなるのが自然です。
トヨタ側の言い分とすれば、原価や人件費をぎりぎりまで削り取る工程で利益を一滴一滴づつ濾過している、それを酌量した上で論じて頂きたい、になるかも知れません(尤もトヨタのその「カンバン方式」がデフレスパイラルに陥った要因の一つだという自覚は無さそうである)。
少なくとも銀行融資を必要としない企業には資金が有り余り、銀行が借りて欲しくても断るのがバブル以降の国際優良企業のポリシーになった次第ですが、融資が必要な時と所に融資を行なわない昔気質の銀行(晴れの日に傘を差出し天気が悪くなると取上げる体質)は不良債権ーーー「ヤクザ不況」とアメリカ人は呼んでいるーーーで恐い思いをしたトラウマから更に貸し渋りを強化したと言えるでしょう。
現在の公定歩合は0.1%、無担保コール/オーバーナイト0.003%の超低水準にあり、短期金利も東京三菱で当初3年0.95%3年以降0.4%優遇、UFJで当初5年1.30%5年以降0.4%優遇、みずほで当初3年1.30%3年以降0.4%優遇となっております。 しかし個人や中小企業が全てこの金利で融資を受けられる訳ではなく、優良担保か定期預金積立のない方の住宅ローンで年利3%前後、教育ローン4%、マイカーローン6%、一般小口融資の主流を占めるに至ったカードローンで8.7〜17.8%、信販系キャッシングで15.6〜24.6%、一部上場サラ金21〜29%、街金の十一(トイチ)という順番になります。
国民全体の平均的ローンは金利10%を切っていない筈です、それほど個人事業者の小口融資がカードローンに依存させられており、実質日本は(預金金利だけが公定歩合通りの)超高金利社会と断定せざるを得ません。
6月29日(水)、国内に出回っている運転資金の相当部分が高金利のカードローンやサラ金マネーである事実を昨日は指摘致しました。 公定歩合=国債・預金利率の異常な低さと商貸金利の追い証的高さが物語るのは、この社会には二重金利体系が存在しており、事業の継続に対しても貯蓄に対しても国民がモチベーションを抱き得ない状況を作り出している問題性に外なりません。 高金利の足枷が物貨の回転率を妨害して事業意欲を削ぎ、貯蓄への不安は直ちに老後の不安へエスカレートするのです。
貯蓄率世界一と言われる日本の高齢者(中でも最高の貯蓄率を誇るのは愛知県人)の郵便貯金や銀行口座(或いは隠し金庫)から金を吐き出させる手段が幾通りか考案され実行に移されて参りました。 郵政民営化・新札発行・ペイオフ解禁がその手段の類である事は言うまでもありませんが、公定歩合0.1の数字も年季の入った預金解約プロジェクトなのです。
カードで預金を引出す際の手数料だけで一年の利子分が消えてしまう、金融機関の破綻における預金保護は一人当たり1千万まで(名寄せ)、郵政民営化の結果郵便貯金もペイオフの対象となる(郵貯銀行として預金保険機構に加入する)、斯の様な時代に国内貯蓄に励むなど馬鹿げているではないか、もっと有効活用できる手立ては綺羅星の如く有るのに何故やらないのか、といった風潮が醸し出されつつあります。
人生は楽しまなければ損だ、子供に財産を残すなど無意味、中高年はやりたい事をやり尽くして悔い無し、これが人生だ、と許りに旅行・ショッピング・グルメ・射幸賭博・リクリエーション・不倫へ向かって二十四時間邁進する構図は醜いだけでなく、築き上げて来た有形無形の価値資産を雲消霧散しお釈迦にする末路にしか成り得ません。 奇怪な中年女性の「韓流」ブームもその延長で捉えるべきなのです。
その余剰貯蓄分が市場に更に吐き出されるに至った場合、待ち望んでいた税務署、新型年金保険、株式投資、優待的外国預金、「シルバーコロンビア」、海外ヘッジファンド(株・商品連動型)、絵画・骨董オークション、貴金属・ブランドコレクション等が争奪戦を展開するのは自明の理であり、此処でも国内より海外商品の魅力優位を誰かが囁いて資産を吸い上げるのであります。
6月30日(木)、日本の中高年が溜め込んでいる貯蓄財産をターゲットに定めた外国ファンド(ウォール街)の指示に従い、この国の内閣府は金利を底に張付け銀行法や郵政法を改正する様な「マネーの自由化」を決定したのでしょうか。 状況証拠には事欠きませんが立証するには生きた人間を証人台に喚問せねばならず、それは告発以外の手段では為し得ないのであります。
少し歴史を遡りアメリカの金融市場が国外からいかなる資金を誘導し飲み込んで来たかを検討して、現代日本の歩みつつあるボーダーレス化の参考に供したいと思います。
アメリカ市場経済は誕生と同時に外国資本を歓迎して受け入れる自由で平等なメカニズムを指標に成長し来たった訳で、下世話に言えば金を持った人間なら誰でも喜んでクラブの一員に登録し「株仲間」「ギャンブルパートナー」の資格を大盤振る舞いして参ったのであります。
ヨーロッパ一国の王室と革命勢力がそれぞれの資産を同時に新大陸市場へ避難させるという滑稽な事態も生じました、皇帝一家全員が処刑されるか逆に革命蜂起が潰されるかして資産の所有者が不明となっても合衆国の金融トラストは構わず自らの資本に摂取、大きく拡充させたのです。
その中で次第にヒエラルヒーが形成され、大雑把な言い方でクェーカー(ピューリタン)系財閥とイスラエル系財閥が覇権を握りました、前者にはカーネギー、カーギル、フォード、後者にロックフェラー、デュポン、メロンの名前を挙げることが出来ます(何れも建国後欧州から移民して来た1世か2世)。 そして金融・保険・石油分野を押さえロンドンコネクションの有力なメンバーであるロックフェラーが最大の財閥(全米総生産の50%強)として君臨し現在に至った、続々と現れるその他の百万長者たちーーー新聞王ハースト、海運王オナシス、自動車王フォード、航空軍事産業のウィリアム・ボーイング、ハリウッドのメイヤーとフォックス、デリバティブ王ジョージ・ソロス、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ等ーーーを以てしてもロックフェラーの牙城は揺るがないほどに。
こういったリストから逆にアメリカ社会の先駆者志向と柔軟性を読み取り、改めて羨望の念に捉われる素朴な方がおられるかも知れません。 しかし彼等の成功を助けたものは世界中から流れ込んだ軍産投機資金であり、その多くは出所不透明な(限りなくブラックに近い)灰色マネーだったのです。 イギリス王室を始めとするーーアヘン戦争後も続くーー麻薬売買組織の(ケイマン島辺りを経由した)ロンダリングフローや、遅れて独立した中南米・アラブ・アフリカ・アジアの独裁者の隠し資産がウォール街の投信コンサルタントによって余す所無く有効活用され、技術と情報のイノベーションをアメリカ一国に齎している、パナマのノリエガ将軍、フィリピンのマルコス大統領、コロンビアのカリ・カルテル幹部の洗浄資金などが合衆国のファンドエージェントの手に守られてーーーパナマやフィリピン国民の資産返還要求を排除しながらーーーアメリカのGDP・総合国力の増大に使われているのです、或いはイラクのフセイン大統領の隠し資産さえ順調に運用されているのかも知れません。 アメリカ資金市場はこの類の裏金をすべて吸い込む謂わばブラックホールなのであります。
7月1日(金)、「隠し資産」避難場所としては長い間スイス国内の銀行口座が無記名のサンクチュアリとなっていたのですが、ナチス問題を今更に騒ぎ立てた米英マスコミの圧力でスイスを代表する銀行が第二次大戦中の行方不明者他の秘匿口座開示を要求され、スイス政府から和解・賠償金として12億5千万ドルがアメリカに本部を置くユダヤ人団体に支払われた、(数年前に起こった)その事件は世界中の金持ちにスイスの聖域性について疑問を抱かせ、実際に資産を引上げ始めました。
確かにナチスがユダヤ人から略奪した金銀宝石やユダヤ人自身が預けていた財産がスイスの銀行に眠っていたのは有り得るかも知れない、しかしナチスに殺された事実も血の繋がりも全く証明できない在米ユダヤ組織が何故それを受取る資格があるのか、同じ民族というだけで個々の検証を経ずに大金の補償に与れるなら国際的な強請りタカりを(チャイナコリアの様に)更に正当化させるのではないか、など数々の問題を引き摺りながら結局ユダヤと米英の圧力に屈したスイスは「世界の秘密厳守銀行」としての地位を自ら放棄したのであります。
ユダヤに脅し取られた賠償金、及び隠し資産の発覚を恐れた預金者の解約金はそっくりアメリカの金融ファンドが吸収する結果となりました、まさに「濡れ手で粟」を地で行くタナボタ詐欺、これがスイス有力銀行の口座から莫大な資金をアメリカ市場に横取りした手口です。
同じパターンが日本に対して(もっと巧妙なやり方で)企てられ、中高年の預金貯蓄額に目を付けた強欲ファンドが連邦政府を動かして一連の預金解約促進策を日本政府に進言させた可能性は有ります。 財政赤字に悩む内閣府に、高齢者預金から補填させ得る方策について知恵を出す体裁を取りつつ、それを掻っ攫ってアメリカ市場に移転させ金融世界帝国の更なる完成に充てるというアイデアが彼らの脳内に浮かばない筈はありません。 そこで「自覚なき工作員」経済評論家のマスコミ登場となります。
アメリカのFRBやFOMCが日本や欧州の中央銀行に比べて小回りが利くと言って激賞する長谷川慶太郎氏らは、それらが私的機関だからこそ公的責任を二の次に利益のみを追求する意思決定が可能となる原理は掴んでいるのでしょう。 しかし筆者が『挑戦者の主張 #14』で述べた「私的金融機関によって国家経済が乗っ取られている事態」には思い至らない様です、ドル紙幣自体が正貨の保証無き借用書、保証人無き私文書同然である証拠は簡単に手に入るにも関わらず。
御承知の通り現在アメリカは住宅建設ブームにあります、アメリカ国民は金利上げの真っ只中にーーー本日FOMCはインフレ懸念を口実に又しても利上げ継続を言明致しましたーーー住宅ローンを組みまくる進路を選んだ訳で、家が広くなれば耐久消費財を購入する必要が生まれ更に家計は増大する、当然国民の貯蓄率は減少して行きますが(恐らく先進国中最下位)、アメリカの金融機関は市場調達によるデリバティブ取引で収益を賄っているためアメリカ人のドル貯蓄など当てにしてはいない、但し金利上昇に苦しむ住宅購入者が支払い不能となった場合は容赦なく物件を競売に掛けて取り立てるのは間違いありません。 この「住宅バブル」は危険な水域に差し掛かっていると言えるでしょう。
7月4日(月)、アメリカ住宅バブルの崩壊は日本経済にどのような影響を及ぼすか、有識者はかなり悲観的に見る傾向にあります。 個人消費へ預貯金を吐き出しつつ、高金利負担で金融・不動産業のキャピタルゲインに貢献しているアメリカ中産階級が、原油高に対抗するドル高目的の金利連騰で疲弊して仕舞う危険性を指摘し、FRBの故意的なブレーキによってバブルの均衡がバーストすればアメリカの上げ底景気はハードランディングを余儀無くされるであろうと。 それは直ちに日本からの輸出を縮小させ、日本株式市場への外資売り立てに繋がって行くとの謂いです。
FRBの合法性如何に関わらずアメリカはFRBの政策で最大限の経済成長を果たしているではないか、アメリカ国民もその恩恵に少なからず与っているのだから異議を唱えまい、とFRB側は多寡を括っておりますが、法的問題を済し崩しにして国民が違和感を抱いたまま放置すればローマ共和制末期に起こった法の麻痺に合衆国社会が陥り兼ねません。
年々開いて行く貧富の差、白人中産階級が常に皺寄せを受ける人種融和策(逆差別)、エイズ発生国にして最大感染国という問題、幼児行方不明多発、ロックフェラー等多国籍企業一族の税金逃れと雀の涙ほどの慈善事業、ドル札発行という国庫収奪システム、反キリスト教種族によるメディア支配といった幾重にも張り巡らされた「奴隷構造」にも必ず限界が訪れます。
ローン破綻が原因で住宅所有という最後の希望を絶たれたアメリカ国民が従順な牝牛であり続ける道理はなく、FRBの成立のみならず自国の制度(ステーツ)史を検証しその暗部にメスを入れる時は近づいております。
7月5日(火)、「高利回り」株が最近人気を集めております、中でも全業種で一番の安定度を誇る電力株をファンドに組入れる割合が高まって来ている、全体の増配傾向もあって東証の予想配当利回りが10年国債利回より高い事に気付いた個人資産家が債券から株式へ資金を移動させ始め、まず投資信託の電力株をメインに据えたファンドに買付けが集中した形です。
東京電力の年配当60円(100株)は年利2.27%、関西電力50円2.24%、中部電力60円2.24%、20年国債の1.98%を比べても確かに(銀行預金よりは遙かに)高利回りではあります、元本保証は無いものの下値変動より値上がり益が見込めるほど今が上げ局面で、公共企業としての採算面も株価収益率PER15.73倍、株主資本利益率ROE9.30%と超優良企業並みです。
電力株の配当狙いだけなら3月決算と9月中間決算のそれぞれ5日前に買い/配当落ち後は下げるので直ぐに売る(但し株価下落率が配当金額を上回る年度多し)、値上がり益を狙うなら毎年1月と7月前後に買い/3月と9月の配当落ち当日の寄付きで売るのが理屈上最大の値幅を取れる日付ですが、必ずしもその思惑通りに当たる訳ではありません。 電力株自体は初心者が預金を別口座に移す意識で長期保有する銘柄としてはベストの選択でしょう。
長期金利の低水準貼り付けで、更なる資金の波がそれ以外の配当高利回り株・株主還元株物色へと押寄せる徴候を見せている、その最大の目玉がJ−REIT(不動産投資信託証券)です。 「8951日本ビルファンド」分配金15100円の2.99%、「8952
ジャパンリアルE」同15880円3.35%、「8954 オリックス不動産」同14323円3.55%と電力株より更に高利を前面に押し出して投資家を引き寄せつつあります。
注意が必要なのは、高利回り銘柄の中に業績下方修正で安値をつけ一見買い得感を覚えて手を出す場合です、配当予想額が記載されていながら会社更生法の対象となり、そのまま上場廃止の紙屑になるリスクも念頭に置きつつ投資は行なって頂きたいと思います。
7月8日(金)、各証券会社は「ロンドン爆破テロの影響は限定的」とコメントを出しております。 「シティ」の通常通り業務開始で金融システム不安は免れた一方、当日のNY市場が予想されたマイナス寄付きから早い切り返しで上げ幅を更に伸ばして引け高に終了した事と、東京市場への差引き460万株買い越し(立会い前)注文を外資証券が出した事が、ザラ場の堅調な値動きをフォローして余りあるとの評価に繋がった様です。
心理的に楽観志向を強めざるを得ない投資家にして、買い注文への安心感に嵌るのが弱点でありますが、テロに対し冷静に過ぎるのは危機感に欠けていると申すほかありません。 テロはサミット同様G7各国を輪番巡業する事を覚悟せねばならないのです。
米英はかつてドレスデン爆撃というテロで己れらの採用した波状攻撃ーーー爆撃編隊を一度帰還させて警報が解除になった都市を再度狙うーーー避難していたドレスデン市民が消火・復旧作業に掛かるタイミングで焼夷弾を使った大規模な絨毯爆撃を周囲から都心に向かって行ない20万以上の人命を奪うという最も残虐で効果的だった第二波作戦に思い当たり、暫くは昼夜を通して眠れないかも知れません。 すべてはアングロサクソンの醜悪な脳髄が生み出した20世紀より続く恐怖であり、自らその恐怖に心臓を掴まれ絶命する寸前の報いを今受けているのであります。
7月11日(月)、イギリスの前警視総監は、テロ実行犯がイギリスに帰化して10年以上経た移民、或いは移民2世でイギリスの教育を受けた若い世代であると断言しています(11日付中日新聞夕刊より)。 ロンドン地下鉄の錯雑とした路線・ダイヤ網を効率よく爆弾テロに生かした痕跡から、入国したばかりの外国人の線を排除した捜査に重点が置かれている状況が読み取れるかも知れません。
それが事実だとすればイギリス社会はイスラム教徒を同化出来ない本質的構造を持っているのだと言えます。 英語という「文明」+イギリス国籍という「名誉」を与えた恩恵が感謝ではなく憎悪を以て迎えられ、元植民地から帰化した移民どころか自国民同士の階級的齟齬を融和させる事さえも失敗して来た歴史の負債を支払っている訳です。 「世界に雄飛した大英帝国」というストーリーの結末が集約されたものが今回のテロであると申せましょう。
中南米をいい意味でも悪い意味でも西班牙化=カトリック化した国民と、経済的収奪の上部機構に乗っ掛っただけの文化的影響力の乏しい国民の違いが、両国テロにおける元植民地の人々からの支援・同情の温度差、他者を受容同化する力量の差となって表われた事も見逃せません。
しかしロンドンの地下鉄程度の迷路などカスバで育ったアラブ人にとり短時間で容易に把握できそうにも思われます、イギリス系白人がロンドンの交通網に全くお手上げなほど民度が低く鈍臭いことは別にして。 犯人は恐らく昨今入国しテロ決行と同時に国外へ逃れた可能性の方を筆者は指摘する者です。
7月12日(火)、イギリス国内のモスクで不審火が70数箇所発生したそうです(モスクが70以上もあること自体驚きですが)。 9日バーミンガムで2万人を避難させて道路を封鎖したり、11日ロンドンでも危険物騒ぎが7箇所で起こり警察が地区立入禁止にするなど、大規模テロの被害国では周章狼狽度が際立っており(何れも結局無駄な騒動に終った)、「寛容で鷹揚なイギリス」なる神話に執着する大学講師や新聞社のデスクは、必死に今回のテロ事件におけるイギリス白人の取柄を模索しているのでしょうが、それは何処を探しても見当らず、却って他国と比較し惨めさのみが浮彫りとなっております。
元来からして上流カーストは陰湿で変態、下層カーストはアルコールと麻薬中毒のフーリガン、中流カーストは人種階級差別だけは一人前の愚鈍な被害妄想患者という社会構造を持った民族でありますから、この種の衝撃には一溜りも無く右往左往し自暴自棄になるのは目に見えていた訳です。
事件から5日以上経過したにも関わらず今だ死骸の欠片は野晒しのまま放置し(日本では考えられない)、全く身元確認を投げ棄て、行方不明者の捜索も非能率的で無能なーーー恐らく爆発物恐さにーーーロンドン警察の対応に業を煮やす市民たちは、「国際多文化都市」を今更宣伝する市長の間抜けなスピーチを子守唄にまた現実逃避へ陥らねばならないのでしょうか。
イスラムコロニーへの陰湿な攻撃が果たして何十年続くか考えると同情心が湧きます、イギリスと言えば何百年前の敵国への憎悪が未だに生き生きと脳髄に燃え盛っている(反日度でもチャイナコリアに優に匹敵する)人種だからです。
7月13日(水)、バングラデシュとパキスタン系が多く住むイギリス中部のリーズ市出身の若者を犯人と特定した記事が各紙面に載っております。 実行犯4人が現場で爆死した一方「テロ首謀者は既に国外へ逃亡した」とはロンドン警察の記者会見の発表内容であり、重要参考人として逮捕した男を移送し郊外の民家を捜索して爆発物を押収したのは当局の手柄だと言いたい様です。
イギリス全土にある監視カメラ250万台(ロンドンに約50万台)という国内スパイ網が完備している世界最大のスパイ国家にしてこの貧弱な成果をどう見るべきしょうか。 テロを防いで国民を守る事も出来なければ、政府内部で調整済みの犯人像に沿った(証拠も無き)ストーリーを暗誦する事しか出来ない、イギリス人はその無能に対する怒りさえ忘れているのかも知れません。
「犯人は自爆した」形にして置けば犯人を勝手に特定しつつ必死に追跡して逮捕する必要はなくなる、「国外逃亡」説も同じ便宜と口実をスコットランドヤードに提供して呉れる訳です。 実際は何処かに犯人は健在でしっかりと次のテロ作戦を準備中である事を国民に知られてはいけない、「連合王国」「コモンウェルス」というフィクション自身の崩壊に繋がるからです。
かつてダイアナ妃がイギリス王室に謀殺された1997年8月、イギリス国民は異常とも言える熱烈さで亡き元皇太子妃に哀悼の意志を表しました。 それはこの国の奴隷抑圧監視制度や私物化されている国家機関への抗議ーー無言の間接的な抗議であり、大英帝国はその最盛期にあってもイギリス国民の為に存在していたのではなく、特定家系の為の支配・集金マシーンでしかなかった事実に国民が気付いている紛れもない証拠でありました。